ゴシック再考 (1) [奇想・妄想]
さて最近は、さすがに10月も中旬を過ぎれば、結構冷え込んで参りました。
気候的に肌寒くなり、日が暮れるのが早くなって、夜が長くなってくると、
暑い季節にはほぼ忘れているのに、じわじわと私の中で頭を擡げ始めるのは、
やはりゴス、ということで、ゴスの季節がやってまいりました。(と勝手に宣言)
というわけで、これから暫くの間、ゴシックとヨーロッパ、というものについて、改めて今勝手に考えてみたい、と思っているわけです。
私は随分前にも別の記事にてゴスについては書いていますけれど、それはいかに自分がゴス的な精神の持ち主であるかを吐露したようなものでしたが、
今回はより広い意味で、そして広い視角で語ることができればと思っています。
さて冒頭の素晴らしい絵画、これは19世紀末を代表する画家の一人、Stuckの "Lucifer" ですが、第一回はこちらStuckの紹介から。
これは19世紀末絵画を代表するゴス絵画のひとつであると私は勝手に考えているわけなんですが、
シュトゥックは日本では殆ど無名状態のような気がしますね。
とはいえ、サロメくらいは知られているかもしれません。
世紀末絵画の本などで結構とりあげられていますので。
Salome, 1906 Stadtische Galerie im Lenbachhaus, Munich, Germany |
それにしても恐ろしく暗黒で凄みのある絵を描く画家です。
ところでそもそもゴシックとはなにか、といわれれば、それだけで一冊の本が書けそうですが、
私ならばまず、人間のこころの底(あえて無意識とはいいません)、或いは闇の中に蠢いているなにか凄みのあるもの、
そしてそれらは本来人々が顔をそむけるような、おおっぴらなものではない何かなのだけれど
何らかのそういった暗黒なものが暗黒に表現されているもの、或いはそれを暴露してしまおうという暗黒な思想のこと、なのではないか、と勝手に思っているのです。
つまり一言で言ってしまえば、人間の心の闇を暴くもの、それがゴシックである、
という方向で押し通していきますんで宜しくお願いします。
その意味では、十分Stuckもバタイユも三島も、いうまでもなく澁澤も楳図かずおもゴシックです。
意外と藤子・A・不二雄なんかも。
それにしても素晴らしい絵画です。
Die Sünde , 1893 Neue Pinakothek, Munich, Germany |
しかし、かと思えば、先日紹介したような実に愛らしくまた粋ともいえるキューピッドを描いたり、下のような実にピュアで天上的な美しい作品を遺していたりする、なんだかよくわからん人です、シュトゥックという人は。
Unschuld, 1889, |
Der Wächter des Paradieses, 1889, Museum Villa Stuck, Munich, Deutschland |
しかし、天上的な美しさと、暗黒の凄みというのは、実は矛盾せずに同時に存在できるもの、
なのかもしれません。
そのあたりも考えてみたいと思っているのです。
シュトゥックのミュージアム、"Villa Stuck" のサイト(独語)。↓
http://www.villastuck.de/index.html
今回はこのへんで。
ゴシック名訳集成西洋伝奇物語―伝奇ノ匣〈7〉 (学研M文庫)
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ネオ・ゴシック・ヴィジョン (トーキングヘッズ叢書 第 33)
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Franz Von Stuck, 1863-1928: Eros and Pathos
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2008-10-20 23:08
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