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年をとることを拒否すること [心理・犯罪]

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8年前に吸血鬼の話を描こう、と決心したんですね。(中略) なぜ吸血鬼かっていうと、まず、私は子供の頃から年を取ることに拒否感があるわけです。(中略)
毎年、”今が一番いい” と思って何とか気持ちを ”今” に引きとめようと必死なわけです。一種の逆行ですよね。精神やらの、年をとって死ぬんじゃなく年をもどってって死にたいわけ。できないけれど。
それで、”年をとりたくない” って動機が最初にあって、”おおきくならない子供” という発想になるわけです。そういうの、いろいろありますね。絵の中に描かれた子供、小さくて死んだ子供、幽霊。生命サイクルの長い宇宙人、そして、吸血鬼




天才漫画家・萩尾望都さんと、ヨーロッパ文化のダークサイドを知り尽くした評論家・種村季弘との
対談からの、萩尾さんのことばの引用ですが、
これ、よくわかるなあ、と。


異界幻想―種村季弘対談集

異界幻想―種村季弘対談集

  • 作者: 種村 季弘
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2002/02
  • メディア: 単行本



私もたぶん中学生くらいから、年をとることに対する抵抗感があって
年なんてとりたくない。 オトナになんかなりたくない。 っていう。

でもこれはたぶん、思春期にでもなれば多かれ少なかれ誰でも思うようなことで、
社会に出る頃には、いつのまにか忘れてしまうものなのかもしれないけれど
私の場合、それが大学に入ってからも、社会人になってからもずっとあって、
そして妙齢に達した今でも、未だに続いてる。


ここでふと思い出したのは、たしか90年前後くらいに、
テレビを見ていたら、戸川純さんが出ていて、
戸川さんはほんとお若いですよね、どうしてそんなに若いんですか、
と聞かれたのに対して、「私は年をとらないって決めたの。」
って答えていたこと。 これが、なぜか未だに鮮明に記憶にあり。

そして、そうか、年をとらないって決めれば、いつまでも若くいられるのか。。
じゃあ、決めた、私も年を取らない。

などと思ったのも、これまた鮮明に憶えており。



年を取ることに対する拒否といえば、最近だとやっぱり
美魔女」ですが

先月だったか、たしか「たけしのニッポンのミカタ」という番組を見ていたら、
美魔女特集をやっていて、ようするに見た目が実年齢より若くて美しい人、
というのがたくさんでてきて、その人たちの暮らしぶりというか
若さを保つために何をしているか、みたいなことが紹介されていてんだけど

私がそこに感じたのは、共感どころか、
ものすごい不快感と、不自然さ。
特に、彼女たちが自分の若作り写真をブログにUPしたりしていること。

なんてグロテスクな人たちだろう、と。


でも、こんなに不快感を感じるのはなぜだろう? としばらく考えてみた。
実年齢よりも見た目が若く、しかも美しくいられることにこだわることは、
別に悪いことではない、いやむしろいいことだと思うのに。

それはたぶん、同じ年を取ることに対する拒否でも、彼女たちのそれは、
上に引用した萩尾さんの拒否感とも、私の年をとることに対する抵抗感とも、
何かが根本的に違うから、という気がする。

つまり、彼女たちの加齢への拒否/抵抗というのは、いわゆるアンチエイジングでしかなく、
なによりも見た目の若さと美しさにこだわり、それに全力を傾け
そして、それを人にアピールしているということ。

そして、それと同時に、自分より老けて見える人たちに対して優越感を感じることが
まず第一の目的となっている、ということではないかと。

どう?私、きれいでしょ?若いでしょ? これで40歳超えてるなんて、すごいでしょ?
見て、見て!

そんな彼女たちの声が聞こえてくるようです。
だから、見た目の若さでなくてもなんでもいいわけでしょう。
優越感さえ感じられれば。

ここに、すごい卑しさを感じる。


恐らく彼女たちは、見た目の若さと美しさをほめられたとき、ものすごい快感を感じてしまったのでしょう。
或いは、自分が同世代の女の人たちと比べて圧倒的に若く、美しいということに気づいたとき、
勝った!という強烈な快感に酔ってしまったのでしょう。
それ故に、それに固執してしまっているのでしょう。

まあ、どうでもいいですけど。別に。
勝手にアンチエイジングに励んでくれたらよろしい。
なんにせよ、若々しくて美しい女性が世に増えることは悪いことではないし。

でも、そんなあなた方をグロテスクだと感じている人間は恐らく私だけではないだろうし
そしてなにより、大事なのは、見た目が若いことではなく、人としてステキであることであって、
卑しさを感じさせる人間がステキであるはずがない、
と思うけどな。

たとえば、岸惠子さんや美保純さんが、どうしてあんなにステキなのか、
よーく考えてもらいたいな。




吸血鬼に話を戻すと、
確かに、彼らは年もとらず、死ぬこともない。

その意味を考えたとき、それは、永遠の命というよりも、どちらかといえば、
永遠の若さに対する憧れみたいなものが、吸血鬼という怪物に投影されている、
という気がする。

人間にとって、いや女性にとって、いちばんの憧れというのは、
永遠の命ではなくて、むしろ永遠の若さと美しさなのでは。。
そこに人間の業の深さも感じてしまう。

もっとも、種村季弘は、
「吸血鬼は、サディズム、マゾヒズム、死姦、人肉嗜食、同性愛など、エロチックな欲望の象徴として夢見られた怪物なのである」
と言っているけれど。(「吸血鬼幻想」、「血と薔薇 Ⅰ」所収)



と、ここまで書いてきて、ふと気づいたんですが
美魔女と吸血鬼は、一見なんの関係もないように思えるけど
いくつになっても若くて美しい、という女性を表現して「魔女」という言葉が使われていることは
注目に値するのではないかと。

つまり、年をとらないこと自体には、人々に一種の怪物性を感じさせるものがある、
ということです。
実際、私も上に「グロテスク」と表現したように。

「美魔女」という言葉を作った人がこれを意識していたかどうか知りませんが
実は、なかなか興味深いですね。

その意味では、実は吸血鬼と通じるものがあるのですね。。
まあ、いわゆる美魔女と呼ばれている女性たちには、そんなイメージは微塵もありませんが。


で、話を冒頭の引用に戻すと、
萩尾先生の描いた、その吸血鬼もののひとつが、名作の誉れ高い『ポーの一族』。
読んだことないのだけれど、ちょっと調べてみたら、ここに出てくる吸血鬼は、
人の血と薔薇の花だけを食べて生きている、というのを読んで、一気に読みたくなり。。

ていうか読むしかないでしょう。



そもそもこの記事は、単純に年をとることに対する抵抗感と、
いわゆる美魔女な人たちとの違いについて書こうと思っていただけだったんですけど
なんだか、いつのまにか私の中でアンチエイジングと吸血鬼が結びついて
急激に吸血鬼に興味が湧いてきた。


それにしても、冒頭の画像、戸川純の「玉姫様」ですが
なんという美しいジャケットでしょう。。





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