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ルーと、ぎょうざと、粋であること [文学・思想]

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ユリイカ 2014年1月号 ルー・リード特集を遅ればせながら入手。

大江慎也が寄稿してるということで、そんなの珍しいから
そのうち買おうと思っていて、いつのまにか忘れていたけど
最近、大江だけでなく、町田康の文章が載ってるというのを知って
即、買った。

大江慎也と町田康の文章が同じ雑誌に載ってるなんて、奇跡みたいなもの。
80年代の日本のロック事情を知っているものとしては、泣けてくるものすらあったり。

町田は20歳のときに初めてルーの BLUE MASK を聴き、
それを当時のバイト先の、ごみを埋め立ててできた人工島で
誰もひとがいないのを幸いに、拡声器にラジカセをつないで大音量でかけてたんだそうな。

悪臭とメタンガスの漂う、だれもいない深夜のゴミの島
鳴り響くルー・リードのブルー・マスク。

なんという映画的で、美しいイメージ。。

でも相方の警備員のじいさんに文句を言われてやめたらしい。



Blue Mask

Blue Mask

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sbme Special Mkts.
  • 発売日: 2009/08/04
  • メディア: CD





いろんな人が大真面目に、或いは思い入れたっぷりに
ルーについて語っているなかで 彼が書いていた

大阪のスーパーマーケットに行くと、「ルーちゃんぎょうざ」という餃子が売ってるが
このルーは、ルー・リードのルーなんだよ」と主張し、議論に負けてきた



には爆笑。 そりゃ負けるでしょ。

しかし

私は、ルーちゃんぎょうざ、という言葉が頭に浮かぶたびにルー・リードのことを思い出す、 その逆はない。あたりまえのことだ。


というのには、グッとくるものが。


わらかしたあとに、なかすなんて。 ね。



ところで私は最近、澁澤の『洞窟の偶像』を読んでいるのだけれど
その中にあったことば。

つまらないことを大げさに語り、重大なことを軽く片付ける、― まあ、これは洋の東西を問わず、粋であることの要諦でもあろうが、ビアズレーはこの間の呼吸をも十分心得ているように思われる。

(澁澤龍彦 「オーブリ・ビアズレーについて」、『洞窟の偶像』)



私は、粋ということはどういうことなのか、いろんな粋な人から学んで
澁澤もそのひとりなんだけれど、
これを読んで、それを改めて思い出した。

つまり思い入れがたっぷりとあるものを、思い入れたっぷりに語るなんてことより
それをむしろ、くらだないことと結び付けて、ひとつの笑い話のように料理してしまう、
そんなルーちゃんぎょうざについての町田の文章の方が、この上なく粋で
このユリイカの中で、いちばん光っていた。



ルー・リードファンというのは、ロックというものに対して真剣に対峙し、
しかも結構なインテリだったりする人が多くて、

飲みながらロックについて語り始めたら、
結構面倒くさいことになることが多い気がするけれど
ユリイカとか読んでる人も、たぶん結構いる。

でも彼らの中で、このユリイカを読んで、上のような町田のすごさに気づいた人は、
はたしてどれだけいるのかなー。


あと思い出したのは、例えば
澁澤が亡くなったとき、金子国義はその棺を担ぎながら、
ずいぶん重いね、2人入ってんじゃないの?と軽口を叩いたらしいということは
以前の記事でも書いたことがあるけれども

本当は死ぬほど悲しいんだろうに、こういうことが言えるのが、
粋だということなんだね。



重大なことにはあまりにも重大に取り組み、
大騒ぎするようなことでもないことに、炎上したり

くだらないことを、そのまんまくだらないと受け止めて、
面白く広げようともしない

最近日本のニュースを見ていると、世の中そういう人ばっかりなんだな、
と。 なんだかねー。

人生ってのは、「おまえの考え一つで、どうにでもなるさ」(JAGATARA / みちくさ)
ってことなんだよ。 たぶん。


では私にとってルー・リードはといえば、まあ、既に他の記事で書いたので
今更書くのもなんだけど
19歳の私の中で、「カッコイイ」の基準となった人の一人。

それは今でも間違ってないと思うし
そのときから私にとって世界は広く、深くなって、妖しい光を放ち始め
人生は面白くなったんだ

だから、ルーに関しては、ただ、ありがとうと言いたい。






ユリイカ 2014年1月号 特集=ルー・リード

ユリイカ 2014年1月号 特集=ルー・リード

  • 作者: 田中泯
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2013/12/27
  • メディア: ムック





ニセ予言者ども

ニセ予言者ども

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: BMGメディアジャパン
  • 発売日: 1999/09/22
  • メディア: CD



ゴランノスポン (新潮文庫)

ゴランノスポン (新潮文庫)

  • 作者: 町田 康
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/11/28
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パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
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