久生十蘭短篇選 [文学・思想]
世の中には、まだまだ私が読んでいない素晴らしい文学作品が、
やまほどある。
それを痛感させられました。
それが先月初めて読んだ、久生十蘭。
世間的には知られていませんが、その手の世界では有名な作家で、
熱狂的なファンも多いのですが、やはり、
凄い作家です。
今回読んだのは短編集ですが、短編とはこうでなくては、
とうならされるようなもの、凄みのある作品ばかり。
単純に、面白くて、読み出すととまらない。
しかも、きわめて美しいイメージに満ちている。
収録されている作品についてひとつひとつ書いていると長くなるので
やめておきますが、
日本の王朝時代における残酷性に凄みがある「無月物語」、
読んでいて単純にスリリングで面白すぎる「黒い手帳」、
大岡昇平にも通じる戦争の残酷さ、「蝶の絵」、
あまりにもピュアな少年を描いた「母子像」、
これもあまりにもピュアな恋愛を描いた、向田邦子なども思わせる「春雪」、
などが
特に印象的でした。
いままでいろんな文学作品を読んできていながらも、
久生十蘭を今まで読まなかったことを、後悔しています。
それにしても、久生十蘭は膨大な数の作品を残しているにもかかわらず、
現在、彼の作品で簡単に手に入るのはほんの数冊、というこのお寒い状況は、
いったいどういうことなのか。
2008年に、定本久生十蘭全集というのが国書刊行会から出版されているのですが、
なんと一冊9,000円。。。
久生十蘭を読むことは、一部のお金持ちだけに許されている贅沢なのでしょうか?
国書刊行会の、そして日本の出版界の常識・良識を疑う、
と言わざるをえません。
などと思っていたらなんと、
3日後の6月4日に、彼の短編集が河出書房新社から発売されるという
情報が!
ちなみに収録作品は、今回紹介した『久生十蘭短篇選 』とは
一切かぶっていないようです。
さすが河出書房新社さん。。 いい仕事してくれます。
今後もこの調子でお願いします。
2010-06-01 19:26
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