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本日のお題:「日本が中国に負ける」って?(1) [ひとり妄想対話篇]

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- おんな編集者A: 先生、たいへんご無沙汰しております。
まー最近の日本は、昨年ほどではないとはいえ、まだまだ景気が悪いですね。

- 先生B: そうだね。まあ、私はあまり興味はないが、みんな暗い顔で景気がいいとか悪いとか話してばかりいるが、それで楽しいのかい?

- おんな編集者A: えーと、楽しいとかいうよりは、とりあえずニュースとかネットとか、そういう話ばかりですし。。 最近だと日本は中国に抜かれて、GDPで世界3位になった、なんて話を結構みかけますね。しかも、なんかすごいガッカリ感と、これはヤバい、みたいなテンションで。

- 先生B: それだけ、The Second Largest Economy、という言葉は、ここ数十年の日本人の精神面を、よくも悪くも呪縛し続けてきた、ということなんだろう。
それは、高度成長期には「誇り」となって、それで頑張れたという一面もあるだろうが、バブル期にはそれが「奢り」になって、調子に乗ってしまったんだろうね。
しかし、バブル崩壊以降は、世界で第2位ってことが、いったい何の意味があるのか、それで果たしてみんな幸福なのか?という疑問を感じる日本人が増えたことも事実だろう。
たとえば、海外に行くと、現地の人がやたら楽しく暮らしているように見えてしまう。それに比べて日本は... みたいなね。
だから、世界で2位の経済大国であることの意味を疑問視しながらも、やはり、3位になったことには「転落」感を感じる。そして、これだけ頑張っているのに、という無力感、不安もあるんだろうね。
つまり、日本人の精神が揺さぶられている、極めて不安定な時代に突入したといえるかもしれないな。 何らかの形で暴発しなければいいが。

- おんな編集者A: そうですね。ところで中国に関していえば、アメリカのメディアの報道では、世界第2の経済大国になったと言っても、潤っているのは中国の都市部だけで、中国全体の生活水準はまだまだ日本やほかの先進国には遠く及ばないとか、中国の国家経済政策には疑問があるとか、それと何よりも、国際政治の舞台で、中国が第2の経済大国に見合う役割を演じる気配が希薄であることなどが、報じられていますね (China becomes world's second-largest economy but it's far from being a leader. : http://www.csmonitor.com/Commentary/the-monitors-view/2010/0816/China-becomes-world-s-second-largest-economy-but-it-s-far-from-being-a-leader)。要するに、あまり良い受け止められ方はされていないというか。

- 先生B: まあ、それが妥当な見方だろう。

- おんな編集者A: でもこの間、私の知り合いが、このままじゃ日本は中国とか韓国とかに負けちゃうよ、とか言ってました。

- 先生B: 負けちゃう、だって?

- おんな編集者A: はい。 日本に来てる学生とか、働いてる中国人とか韓国人は、みんな英語と日本語ペラペラだし、英語もろくにしゃべれない日本人より全然優秀ですよ、って。
要するに、なんか、やっぱりいま中国が凄くて、それに比べて、日本はもうダメなんじゃないか、みたいな空気があるわけですよ。

- 先生B: ちょっと待ってくれ、何を言ってるんだ、と言いたいね。
だいたい、英語がペラペラだったら優秀なのかい? 彼らが仕事をしている様子を見た上で、優秀だ、と言ってるのならわかるが、英語や日本語がしゃべれるというだけで、そんな印象をもっただけかもしれないね。とかく日本人は、外国語がしゃべれる=すごいこと、と思いがちだ。
確かに日本人は外国語が苦手だが、にもかかわらず、グローバルにビジネスを展開して、これだけの繁栄を築いているじゃないか。

- おんな編集者A: でもそれは、結局、語学力のある一部の優秀な人たちが、頑張っている結果なんじゃないんでしょうか?

- 先生B: いや、必ずしもそうじゃないだろう。私の友人でも、一年の殆どを海外で過ごして、いろんな国のいろんな企業を回りながら、ガンガン仕事をしている営業だとかエンジニアがいるが、彼らのTOEICのスコアは、700点前後らしい。 はっきり言って、まあ。。あまり「優秀」なスコアではないなぁ。 しかし、ビジネスマンやエンジニアとしての彼らは、「優秀」だ。
だから、語学力なんて、あまり国の繁栄にとって重要とは思えないね。
そもそも、どんな国にだって優秀な人間はいるんだから、中国や韓国にだって優秀な人間がいるのは当たり前で、別に驚くことでもないじゃないか。それを、そんな物言いをするということは、あたかも、優秀な人間がいることが意外だった、とでも言っているように聞こえるよ。つまり、その君の友人には、彼らに対する差別意識があったんじゃないのかい?

- おんな編集者A: うーん、言われてみれば、そうとも受け取れます。

- 先生B: それに、中国にも韓国にも、優秀な人間は昔からコンスタントにいたはずだ。なのに、以前は、そんなことを言う人はおらず、最近になって言い出したというのは、中国が最近経済的に伸びてきたから、ふつうの中国人さえ優秀に見えるようになったんじゃないのかい?つまり、心理的なバイアスの問題だ。それまでパッとしないと思っていた人が、東大出身、と聞いた瞬間に、急に凄い人に見えたりするようなものさ。

- おんな編集者A: でも、日本が中国に負けてることは事実ですし。。 実際、日本より中国のほうがぜんぜん活気があって、その差は年々開いているような印象を受けます。 このまま日本は没落していくんじゃないか?っていう不安が広まるのも、自然という気もしますが。

- 先生B: まあ、それもわかるが、それよりもまず、「勝った」の「負けた」のと言う事が、気に食わないね。国と国との間に「勝ち負け」を持ち込むこと自体、醜い優劣感情むきだしじゃないか。実に見苦しいね。
そもそも、中国や韓国に負けたっていうのは、何をもってして言ってるんだ? しかも、GDPっていう経済の指標のひとつに過ぎないものを取り上げて、負けたと言って意気消沈することに、なんの意味があるんだろうね。 まあ仮にそれが経済的な負けを意味するのだとしても、それは即、「国」として、「負け」たことを意味するんだろうか?

- おんな編集者A: うーん。。 まあ確かに一面的ですが、しかし、事実、中国製品とか韓国製品が安くて、日本製品より売れてるわけですよね。

- 先生B: かもしれない。 じゃあ聞くが、君は、店で日本製品と中国製品が並んで売られていて、値段が同じだったら、どちらを買うんだい?

- おんな編集者A: それは。。 まあ正直、日本製品ですね。

- 先生B: だろう? そこなんだ、大事なのは。
これは以前、友人のインド人を連れてデジカメを買いに秋葉原に行った際、店の人から聞いた話だが、中国人客が多いらしいんだけれども、彼らはそこで、絶対に日本製品を買う。中国製品は、いくら安くても買わない。 なぜなら、Made in Japan が欲しいからなんだ。ほかにも、資生堂の化粧品なんかは、中国では、高級品扱いだときいたことがある。つまり、これが、日本製品の魅力であり、ブランド力なんだ。
逆に、中国製品で、何かほしいものあるかい?韓国製品ではどうだ?

- おんな編集者A: うーん。。 特にないですね、正直。中国茶くらいかなあ。 韓国だと、うーん、思いつかないな。。 キムチも焼肉も嫌いだし。 
考えてみると、中国とか韓国って、そもそもメーカー名すらでてこないですね。

- 先生B: そうだろう? それは君だけでなく、たいていの日本人は、そう答えるだろうな。 
しかし、日本には、トヨタや日産、ソニー、任天堂を初めとして、世界中に知れ渡ったメーカーがある。そして、それらの商品は、世界中で、中国製品より高くても売れる。 それだけ、皆が欲しがる、魅力的な製品を作っていると言うことだ。それに、品質に対する信頼というもの大きい。
じゃなければ、安い中国製品に、とっくに駆逐されているはずだろう? 商品の価値というのは、価格や品質だけで決まるものじゃあない。 ボードリヤールの理論を出すまでもないね。
まあ、ドイツのメルセデスやBMW、フランスのブランド物のバッグとまでは言わないにしても、高くてもみんなが欲しがるようなものを作れる企業がどれだけあるか、ってことが大事なんだ。 それが国の力であり、国のイメージにも直結するしね。
その意味で、勝ち負けを言えば、君のように、中国製品や韓国製品で特に欲しいものはない、メーカーすら知らない、という人が多数を占めるのであれば、日本は中国や韓国に圧勝じゃないか。

- おんな編集者A: 確かにそうですね。それに、最近は、中国とか韓国から日本に来てる観光客、すごい多いじゃないですか。実際、私、中国にいったとき、日本大好きとか、渋谷で買い物するのが夢、なんていってる現地の女の子、たくさんいましたよ。最近の例の問題で、中国から日本への旅行が規制されてるなんて話を聞きますけど、いちばん困るというか、悲しむのは、彼女たちなんじゃないかなあ。

- 先生B: そうだね。 ところで逆に、君のお友達で、北京とかソウルで買い物するのがあたしの夢、なんて言ってる人はいるかい?

- おんな編集者A: いやぁ。。正直、聞いたことないです。

- 先生B: だとすれば、ここにもまた「勝ち負け」の概念を持ち込むとすれば、どちらが勝者なのかは、明らかだね。
ところで、たとえば、バブル前の日本人にとっては、海外旅行なんて、本当に贅沢だった。だから自然と、欧米というのは、圧倒的な、憧れの存在だったんだ。
逆に、当時の欧米から見れば、日本なんて、どこにあるのかも知らない、別に興味もない、っていう存在だったんじゃないか。それが今では、渋谷や秋葉原はいつも外国人観光客でにぎわっているし、自由が丘あたりですら、ここ数年でかなり外国人観光客が増えている。
日本が大好きとか、いつかアキバに行くのが夢だ、なんて言って、日本に憧れを持っている欧米の若者が、どれだけ多いことか。
逆に、日本から欧米に行くのは、今では何らスペシャルなことじゃない。いまどき、いつかフランスに行くのが夢です、なんて言う人いないだろう。ちょっと休みが取れれば、気軽にいけるわけだから。
だからといってこれは、日本が勝って、欧米が負けた、なんて言うべきではないし、実際、そんなこと聞かないだろう。 単純に、いい関係を築くことができた、というべきだと思う。

- おんな編集者A: 勝ち負けではなく、いい関係ですか。 なるほど。


( つづく )



http://www.financialpost.com/China+becomes+world+second+largest+economy/3403745/story.html

http://www.financemarkets.co.uk/2010/07/30/china-becomes-world%E2%80%99s-second-largest-economy/

http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8471613.stm

http://www.lefigaro.fr/conjoncture/2010/08/01/04016-20100801ARTFIG00189-la-chine-deuxieme-economie-du-monde.php

http://www.lexpansion.com/economie/actualite-economique/la-chine-est-elle-vraiment-la-deuxieme-puissance-economique-mondiale_237422.html

http://www.rue89.com/chinatown/2010/08/16/la-chine-devient-la-deuxieme-economie-mondiale-devant-le-japon-162563




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Egon Sciele, Seated Girl Facing Front,
1911,
Bayerische Staatsgemaldesammlungen Munich, Germany.

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