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「東京より日本は広い。日本より・・・」 [文学・思想]

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「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より・・・」
で一寸切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中の方が広いでしょう」と云った。

(夏目漱石 「三四郎」)



最近、茂木健一郎氏がなにかで取り上げていたのを見て、再読した
漱石の「三四郎」からの一節ですが、
これには、うならされました。

日本のつぎに「世界」とか「亜細亜」を持ってくるかと思いきや、
まさか「頭の中」、とくるとは。。

この一文に、外の世界と、自分という内なる世界との拮抗、
及び、内なる世界の無限の拡がりの可能性、みたいなものが表現されているようで、
考えさせられるものがありました。


私が『三四郎』を読んだのはたぶん20代半ばごろでしたが、
そのときは、これには全く気づかず、正直この作品自体もあまり印象にも残らず、
("Stray Sheep" ということばだけが、妙に印象に残っていた)
内容の方は完全に忘却の彼方。。

以前の記事で 『それから』 について書いたことがありますが、
最近、漱石の書く文章の凄さを再発見しています。

10代、20代のころにいくつか読み、正直何が良いのかわからず、
あまり印象に残らなかった漱石作品ですが、
今読んでみると、まず、文章が驚くほどにスタイリッシュ。

徹頭徹尾、綿密な計算に基づいて書かれているかのように、
或いは緻密で繊細なモザイク画を作り上げるかのように、
極端なまでにカチッとしており、寸分の綻びもなし。
なので非常に読みやすのですが、それと同時に、若干漂う、緊張感。

内容としては、正直、面白いとかそういった類いではないのにもかかわらず、
なぜかその文章の力に、ぐいぐいと引き込まれ。。

それが、漱石の凄みなのでしょう。 

そして、これが日本語の凄みというもの。





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