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宿命と運命 [文学・思想]

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私は基本的に運命論者で、運命ということをよく考えたりする。

美輪さんの本を読んでいると、よく宿命と運命は違うということが出てくる。
宿命は変えられないが、運命は自分の力で或る程度なんとかなるものだということだけれど
私の考える運命と、そこで言われる運命とは、たぶん意味が違う。

たとえば、ある重大な選択を迫られるような局面など、
自分の意思でなにかを選択したように思われる場合でさえ、
その選択すらも運命なのだ、というふうに、私は思っている。
何らかの見えざる手によって、それを選択するよう導かれているんだろうな、と。
こういう言い方をすると、宗教/スピが入ってしまうけれど。

つまり、全ては誰かの手によって書かれた脚本どおりに動いているにすぎないのではないか、
人間にできるのは、せいぜい演出くらいなのではないか。。

なんか見方によっては一種のあきらめに近いというか、
あまりいい考え方ではないかもしれないけれど、
基本的には、そう思う。


ところで先日読了したマキアヴェリの『君主論』でも、運命について書かれていた。


この世のことは、運命と神の支配にまかされているのであって、たとえ人間がどんなに思慮を働かせても、この世の進路をなおすことはできない。(中略)
この見方によると、なにごとにつけて、汗水たらして苦労するほどのことはなく、宿命のままに、身をまかすのがよいことになる。(中略)
しかしながら、われわれ人間の自由意志は奪われてはならないもので、かりに運命が人間活動の半分を、思いのままに裁定しえたとしても、少なくともあと半分か、半分近くは、運命がわれわれの支配にまかせてくれているのが本当だと、わたしは考えている。

(マキアヴェリ 『君主論』)



つまり、半分は宿命、残りの半分は運命で、
運命は人間の意志によって動くものだ、ということだろうけれども
そこで重きが置かれるのは、あくまでも「人間の自由意志」。
そして、彼は「人間の自由意志」の力を信じているのであろうことが、その文章から強く感じられる。

「人間の自由意志」ということばは、いかにも宿命に抗い、
自らの力で人生を切り開いていく、という人間の強さがこめられていて
このような力強い文章を読むと、そこに人間の尊厳とか美しさなんかを感じて、
上に述べたような運命論者の私でさえ、妙に感動をおぼえたりする。


マキアヴェリはさらに、運命を河川の氾濫にたとえながら、
次のようなことも言っている。


運命は、まだ抵抗力がついていないところで、猛威をふるうもので、堤防や堰ができていない、阻止されないと見るところに、その矛先を向けてくる。


確かに、運命というのは、弱いところを突いてくるね。。
最近の私の身にふりかかってくることを考えると、つくづくそう思う。

でもそれは、鍛えられているんだな、と。
弱いところを突かれなければ、人間は成長できないのだろうから。


それはそうと、『君主論』はたしかに面白いし、人間に対する彼の観察眼の鋭さにも
うならされるのだけれど、これを読んでつくづく思うのは、

ヨーロッパの歴史というのは、古代ローマ以来、
戦争、決闘、略奪、侵略、虐殺、裏切り、陰謀、暗殺、、、
そんなことの繰り返しなのだ、ということ。

それはもちろん今初めて知ったことではないけれど、
それをこういったかたちでよりリアルに、改めて思い知らされて、
読んでいるうちに、暗澹たる気分になってしまう。

たとえば、イタリアを旅行しているとわかるのだけれど、
イタリア人はとても陽気で、のんびりしていて、いい加減(いい意味で)なんで
そんな彼らに、このような暗黒の歴史があるということが、信じがたい。

人間はどうしてここまで戦争や、領土をめぐる争いばっかりしてるのか、
どうして人を殺してまで、権力が欲しいのか。。

これってたぶん、学生の頃から考えているような気がするけど
未だに回答が得られないことのひとつ。


でも、たぶんマキアヴェリは、そんなイタリアの現状に嫌気がさし、
すぐれた君主が登場することで、イタリアに統一と平和をもたらしてほしい、
ということを、当時誰よりも強く願うひとだったのでは、という気がする。

ていうか、そう思いたい。





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