乱歩+プラクティカル・ジョーク [奇想・妄想]
乱歩の『ペテン師と空気男』を、久々に再読。
前回読んだのは、いつだったか記憶にないくらい前なので
内容を完全に忘れていた。
これが、めちゃくちゃ面白い。
こんなにも面白いものを、読んだことすら忘れてしまっている自分がなさけない。
(まあ、そのおかげで、初めて読むときのように新鮮で、いいんだけど)
小説としても面白いのだけれど
私の興味を引いたのは、この作品は、プラクティカル・ジョークをベースにした話だということ。
(プラクティカル・ジョークについては、こちらに詳しい)
例えば、この作品の冒頭、
主人公が、電車に乗っていると、自分の前に座った乗客が、熱心に何かを読んでいる。
何を読んでいるのかとふと目をやると、それはド=クインシーの著作なのだけれど、
ページは真っ白で、何も書いていない。
この乗客は頭がおかしいのか、それとも自分の目がおかしいのか、
主人公は非常に困惑する。。
結局、これはこの乗客によるジョークだった、という話。
まったくもって、人をくった話である。
このような、結構なクリエイティヴで凝ったジョークの話が続くのだけれど、
これがとても面白い。
これは単なるいたずらの域を超えた、イマジネーションと、教養と、センスと、
そしてそれなりのお金もなければできない、手の込んだジョーク。
何よりもエレガンスが大事で、つまり、精神の貴族たる人間にしか許されない遊び、
なんだろうなと思う。
乱歩作品を読んでいると、金とヒマを持て余していて、しかもそれなりに教養もあって、
でも退屈してて、探偵小説にはまったりとか、犯罪まがいのことをして遊んでいる人、
要するに、世の中で犯罪くらいにしか興味がない高等遊民、というのが結構出てくるけれど、
そういったことが許され、存在し得た(かどうかは知らないけど、少なくとも小説の登場人物として書かれるような)そういった時代の空気がうらやましい、といつも思う。
私も高等遊民に生まれたかった。。 と。
私の趣味も、美意識も、彼らにかなり通じるものがあると思うんだけど
彼らと違って、時間もお金もないんだよね。。
日本のどこかに、私とお友達になってくれる高等遊民な方、いないかな。。
2012-12-16 18:38
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