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乱歩+プラクティカル・ジョーク [奇想・妄想]

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乱歩の『ペテン師と空気男』を、久々に再読。

前回読んだのは、いつだったか記憶にないくらい前なので
内容を完全に忘れていた。

これが、めちゃくちゃ面白い。

こんなにも面白いものを、読んだことすら忘れてしまっている自分がなさけない。
(まあ、そのおかげで、初めて読むときのように新鮮で、いいんだけど)


小説としても面白いのだけれど
私の興味を引いたのは、この作品は、プラクティカル・ジョークをベースにした話だということ。
(プラクティカル・ジョークについては、こちらに詳しい)

例えば、この作品の冒頭、
主人公が、電車に乗っていると、自分の前に座った乗客が、熱心に何かを読んでいる。
何を読んでいるのかとふと目をやると、それはド=クインシーの著作なのだけれど、
ページは真っ白で、何も書いていない。
この乗客は頭がおかしいのか、それとも自分の目がおかしいのか、
主人公は非常に困惑する。。

結局、これはこの乗客によるジョークだった、という話。
まったくもって、人をくった話である。

このような、結構なクリエイティヴで凝ったジョークの話が続くのだけれど、
これがとても面白い。

これは単なるいたずらの域を超えた、イマジネーションと、教養と、センスと、
そしてそれなりのお金もなければできない、手の込んだジョーク。

何よりもエレガンスが大事で、つまり、精神の貴族たる人間にしか許されない遊び、
なんだろうなと思う。


乱歩作品を読んでいると、金とヒマを持て余していて、しかもそれなりに教養もあって、
でも退屈してて、探偵小説にはまったりとか、犯罪まがいのことをして遊んでいる人、
要するに、世の中で犯罪くらいにしか興味がない高等遊民、というのが結構出てくるけれど、

そういったことが許され、存在し得た(かどうかは知らないけど、少なくとも小説の登場人物として書かれるような)そういった時代の空気がうらやましい、といつも思う。

私も高等遊民に生まれたかった。。 と。

私の趣味も、美意識も、彼らにかなり通じるものがあると思うんだけど
彼らと違って、時間もお金もないんだよね。。

日本のどこかに、私とお友達になってくれる高等遊民な方、いないかな。。






ペテン師と空気男 (江戸川乱歩文庫)

ペテン師と空気男 (江戸川乱歩文庫)

  • 作者: 江戸川 乱歩
  • 出版社/メーカー: 春陽堂書店
  • 発売日: 1987/07
  • メディア: 文庫



阿片常用者の告白 (岩波文庫)

阿片常用者の告白 (岩波文庫)

  • 作者: ド・クインシー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/02/16
  • メディア: 文庫



悪魔の骰子―ゴシック短篇集 (ゴシック叢書)

悪魔の骰子―ゴシック短篇集 (ゴシック叢書)

  • 作者: ド・クィンシー
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 1982/08
  • メディア: 単行本



トマス・ド・クインシー著作集〈2〉

トマス・ド・クインシー著作集〈2〉

  • 作者: トマス ド・クインシー
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 単行本




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