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熱帯・現実・非現実 [旅・おでかけ・写真]

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先日の記事の続きになるけれど、

私は、熱帯にいると、なんともいえない非現実感に包まれることがよくある。
リアリティがなくなる、というよりは、夢を見ているような、なかなか悪くない感覚。

しかし、現実的なことを言うと、とにかく緊張感がなさすぎて、まず、
仕事をやる気がなくなって困る。
現地のひとたちは、実にのんびりして、ほわーんとした人たちが多いので、
どうしても、こちらもつられて、ほわーんとしてしまう。

あと、蚊やハエがやたらと多くていらいらさせられる、
日差しが強すぎて、昼間はほとんど外を出歩けない。。

また、例えばタイの町を歩いていると、いたるところで肉の焼ける臭いがしたり
肉が店先にぶらさがっているのをみかけることが多く
基本ベジタリアンな私にとっては、ちょっとつらい。

タイの人はとにかく肉をよく食べる。
あと、飲み物はたいてい甘いもので、甘辛い食事をしながら、コーラを飲むことが多い。
街中では、甘そうなフラッペのようなものを飲んでいる女子多し。
コンビニなどでも、ドリンクからお菓子から、大量に甘いものが売っている。
ふつうに緑茶だと思って買って飲んだら、砂糖が入っててすごく甘かった、なんてこともあった。

これではタイ人はみんな糖尿になってしまうのでは、と心配してしまう。
熱帯の諸国を歩いていて気づくのは、とにかく、日本と真逆で、
若者が多くて年寄りが少ない、ということなんだけど、
みんな糖尿で早死にしているとか・・?



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そのほかに気づくことといえば、

走っている車の大半が日本車
工業団地にはたくさんの日本企業の工場
街中には日本語や中国語の看板がたくさん
ホテルに泊まれば、部屋の電気製品の大半が日本製か韓国製
オフィスビルに入っているのは、日本企業をはじめとして、外資系ばかり

要するに、その国で作られたオリジナルなものより、海外のものが圧倒的に多い。

オリジナルなものといえば、タイのトゥクトゥクくらい?(このデザイン、めっちゃかわいい)

なんか、そうやって日常が外国製品であふれているというのも、悲しい気がする。
例えば、東京が、中国企業やアメリカ企業の看板だらけになってしまったら、
かなり嫌な気分になると思う。

でも、滞在しているうちに、考えが変わった。

自分では何もつくらない、競争をしない、他の国が作ったものに依存して生きる、
考え方によっては、これはとても効率がいい生き方かもしれない、と。

便利なものは、よその国の人がつくってくれる。
「ものづくり」、「技術革新」、すべて外国からやってくる。
自分は、それを輸入して、売るだけ。
必死な努力とか、しなくていい。

或いは、それを作る工場を自国に作ってもらって、雇用を創出してもらい、税金を納めてもらう。
どこかの国みたいに、マネして安く作ってもうけてしまおう、とすら考えない。
これはこれで、結構、国は潤うのかも。
現に、タイの失業率は1%前後だから、日本より低い。

「ものづくり」だとか「国際競争力」とかいって、激しい競争とか、
血のにじむような努力を強いられる日本のメーカーで、神経をすり減らし、
いろんなものを犠牲にしながら働くよりも、
外資系企業のタイ支店とか工場で働くほうが、よっぽど楽な人生かもしれない。

なんか、日本が、「ものづくり」で世界をリードして、みたいなことを言ってることが、
あほらしくなってくる。
日本も、タイ的な生き方を学んだほうがいいんじゃないかなぁ、
とすら思えてくる。

なんか、そんなことを考えてたら、前回書いたような悲しみがずいぶん薄らいだ。
ていうか、勝手な、しょーもない感傷のようなものでしかなかったんだろう、たぶん。


なんて、現実的なことを考えることは少なくて、実際は、
熱帯にいる間は、なんともいえないのんびりした空気に流されている感じで
それはそれで、とても心地よい。

目に見えるもの、空気感、すべてが日本と違う。
現実というのは、美しくないことが多いけれど
熱帯においては、そうでもない。
日本的な「現実」、つまり、あまりにもストレスフルなものとイコールなそれは、
熱帯では全く見られない。

美と幻想と、下世話な現実。
一歩間違えば、現実なのか夢なのかよくわからなくなるような、
そんなある種のあやうさの上に成り立っている空間。
リアルなのは、暑さ、生命感だけ。

鮮やかな色彩と、強烈な光、むせかえるような生命感の充溢。
それらがないまぜとなって、じっとしている。

そして、妙に、しんとしている。
三島の『豊饒の海』のラストのように。


それが熱帯というものらしい。






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