市川崑 + 金田一耕助シリーズ：Lumière!：SSブログ

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市川崑 + 金田一耕助シリーズ　[映画・芸能] [編集]

先日、なんとなく横溝正史のことを思い出して、
なんとなく、『夜歩く』を買って読んでみた。
横溝作品を読んだのはすごく久々だったのだけれど、これがすごく面白かった。

『獄門島』を持っていたことを思い出して、これも読んでみた。
これは『夜歩く』以上に面白かった。
一度読んでるはずだけど、読みのが久々すぎて、完全に内容を忘れていた。

ここで、確か『獄門島』は市川崑監督の映画も見た覚えがあって、
なんかすごく面白かったような記憶があるので、早速DVDを借りて見てみた。
これがまた、めっちゃ面白い！！

これはつまり、市川崑監督、石坂浩二主演のいわゆる金田一耕助シリーズのひとつで、
まあ私がわざわざ紹介するまでもない、有名なもので
「犬神家の一族」、「獄門島」、「悪魔の手毬唄」、「病院坂の首縊りの家」、「女王蜂」、の
５作品から成っているんだけど

あまりにも面白かったので、結局、何度も見ている「犬神家の一族」以外の３作品も
ぜんぶ立て続けに見てしまった。。

正直、けっこう久々に、映画を見ることに夢中になった。

とくに、「病院坂の首縊りの家」にはびっくりした。
ていうか見ててテンションがあがった。　これは凄い。

とにかく、その映像美が衝撃的なくらいに素晴らしい。
その幽霊屋敷的な舞台装置、人形的な桜田淳子の醸し出す雰囲気が完全にゴスで、
素晴らしい。
ジャパニーズ・ゴスの名作といっていいのでは。

それに、出演している役者陣が素晴らしすぎる。
いつもの石坂浩二、加藤武、大滝秀治はもちろんのこと、
犬神家にも出てた、相変わらずの怪演が最高・あおい輝彦、
単なるイケメンにおさまらないイイ味・草刈正雄、
これぞ昭和の女優、という演技と人形のような美しさ・佐久間良子、
あと、わすれちゃいけない、トボケた妙味が最高・三木のり平に常田富士男。
名優による名演技が最高。

草刈正雄なんて、主役級の男前っぷりなんだけど、
そんな彼があまり目立たないくらい、役者陣が充実。

中でも、最も強烈な印象を与えるのが、上にも書いたけれども、やはり、
つい先日、十数年ぶりに公の場に姿を現した、桜田淳子。

決して美人ではないんだけれど（失礼）、人形のようないでたちに、鬼気迫る演技、
独特の存在感。　放たれるオーラが半端じゃない。
たぶん市川監督の演出が素晴らしく、彼女のいい部分を引き出していたんだろうけど、
こんなに素晴らしい役者だったのか、とびっくり。

内容は、まあ、正直、あまりいいとは言えない。
殺人の動機が、ちょっと無理があるんじゃない、という感じだし
人間関係がややこしすぎて、余計な情報の情報量が多すぎてわけがわからないんだけど
でもそんなことどうでもいいくらい、映像と役者の演技と、緻密な演出とが素晴らしすぎて、
一瞬たりとも飽きさせない。
久々に、いい「映画」を見た、と思った。

それにしても、このシリーズ、どの作品にも、市川美学が冴えまくっている。
この人は、古い日本家屋を美しく撮らせたら日本一だと思うのだけれど、
どの作品においても、まさに陰翳礼賛というか、
コントラストの強い、光と影を自在に操りつつも、深みのある色彩をもった映像が
素晴らしすぎる。

なんてことのない山の風景にも、まさに山に神が宿っているような、
そんな凄みが感じられる。
山の木々が、霧に煙り、風に揺れる。
そんななんてことのない日常的な風景に、これだけ凄みを感じさせるこんな映像、
これはもう誰にも撮れないんじゃないだろうか。

また、出演者に話を戻すと、このシリーズは、
私の大好きな岸恵子に太地喜和子、若山富三郎、ピーター
高峰三枝子に司葉子まで出てるし。

こうして名前を挙げただけでも、本当に凄い、と思うし
市川監督がまたこれらの役者、特に女優を本当に美しく撮る。
ただ表面的に美しいだけじゃなくて、どこか翳のある、まあいわゆるワケあり的な
ややこしいものを感じさせる美しさ。そこがとても映画的でいい。

だから、このシリーズの面白さは、横溝正史作品であるということよりも、
市川崑による映像美と豪華キャストによる部分もかなりあると思う。
やっぱり、映画というのは、いい役者と、それを監督がどれだけ良く撮るか、
で決まってしまうってことかなぁ。
五社英雄監督+尾形拳なんかもそうだけど。

とにかく、そんな凄い監督と、すごい役者がそろい踏みしてしまった、
市川崑監督＋石坂浩二主演の金田一耕助シリーズは、まさに、
日本映画史上における奇跡。激オススメ。