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ベルハーという奇跡 [映画・芸能]

サーカスと恋愛相談.jpg



最近の日本のアイドル業界は面白い。
本当にいろんな人がいる。

今年に入ってから、Negicco、BiS、BABYMETAL など、
その曲の素晴らしさに感動したり、そのインパクトにびっくりすることが多いんだけれど、
とくにBABYMETALには本当にびっくりして、もうこれ以上ないでしょ、
と思っていたら
先日またしても、度肝を抜かれた。

それがベルハー、つまりBELLRING少女ハート


上にあげたNegiccoはわりと正統派なので除くとしても、
BiS、BABYMETALなども、ちょっと今までになくてインパクトのあるアイドルだけれど、
ベルハーは、彼女たちともまた違った、その異形性がすさまじい。

そもそものきっかけは、彼女たちのPV、「サーカス&恋愛相談」だったんだけれど、
これを見たときは、ほんとにびっくりした。

濃厚な昭和ノスタルジック的な空気を感じさせながらも、いままでに聴いたことの無いような、
めまいのするような、つかみどころのない不思議な曲。
アイドルのPVというよりは、非常に優れたアンダーグラウンドな、
幻想的な映画として完成している映像。
それらが一体となって、そこはかとなく感じられる、すごい異物感、
この世のものとは思われない、異次元空間性、、

なんだこれは!? と、驚くとともに、頭がぐらぐらするような、
認知の枠組みが揺すぶられるような感覚に陥った。

そして、それを何度か見ているうちに、完全に、彼女たちに魅入られてしまった。

そこでとりあえずベルハーについて検索してみると、
黒い羽をまとったきわめてスタイリッシュな彼女たちの画像を発見。
この瞬間、彼女たちのイメージが一瞬にしてかたまって、私の中の混乱がおさまった。

つまり、ベルハーとは、「少女」というものの天使性、異形性、残酷性、イノセンス、、
要するに、少女幻想といったものをひとつに凝縮した、奇跡的な存在ではないか。

それは例えば、鏡花作品や、コクトーの「恐るべきこどもたち」、ナボコフの「ロリータ」、
丸尾末広、金子國義、「小さな悪の華」など
通常、映画や文学でしか登場しない、従って非現実な存在であって
それは既にアイドルという概念で捉えきれるはずもない。
ベルハーは5人組(最近一人増えて、いまは6人?)なのだけれど、
よくこんな独特な空気を持った珍しい子たちがこれだけ一堂に会したものだ、と
その出会いの奇跡というものを感じずにはいられない。


というわけで、彼女たちのデビューアルバム "Bedhead" を即買いしてしまったのだけれど

まさにこのインナーの写真、これがまさに彼女たちのイメージそのものズバリ、
の見事な写真なんだけれど、これは結構な衝撃だった。


BELLRING_DSC_0018_01.JPG


私は、ここに写る彼女たちに、ある種の化け物的なもの、つまり、
泉鏡花的な、つまり、異界とこの世とを行き来する、人間ではない存在、
そんなものを感じた。


ところでこの "Bed head" だけれど、
まずCDのパッケージデザインが、非常に面白い。
開けてびっくり。

飛び出す絵本形式になってる!

私もいままで何百枚CDを買ったかわからないけれど、
こんなの見たことない。おもしろーい。


BedHead_CD_DSC_0013.JPG


BedHead_INNER_DSC_0015.JPG


内容も聴いてびっくり。

まず驚くのが、そのあまりにも独特な音楽性なんだけれど、
更に驚くのが、そのあまりにもやる気のない、独特な歌唱。

腹筋がないのか?というくらい力のない声。
かといってフレンチ的なオサレ感のあるウィスパーヴォーカルとしては成立していない。
でも、その間の取り方、その声質が、あまりに独特で、絶妙なのである。
殆ど、魔術的といってもいい。強烈。

うまく歌おうなんて気負いは微塵も感じられず、努力のあとも全くみられない。
これを、ヘタだとかやる気あんのかとか、プロ根性が足りないとか
いうひとがいるみたいだけれど、しかし、彼女たちは正しい。私が思うに。

何の努力もせず、そのまんまの自分をさらけだしていて何が悪い?
それじゃあ、すごく努力して、がんばって、歌の上手なアイドルの子が、
どれだけインパクトのある歌唱を聴かせてくれるというのだろう。

歌にとって大事なのは、その声・その歌唱に宿る魔性であり、
歌が上手い・下手、やる気のある・なし、そんなのどうでもいい。
要するに、その歌声に魅力があるかないか、それにつきる。
もちろん、BABYMETALのすずかちゃんのように、上手だからその歌唱が魔力を発揮する、
ってこともあるけどね。でもそれもすずかちゃんの声質ありきであって。

努力なんて、自分を既成の枠組みにあてはめて、個性を潰すだけなんだ。
ベルハーを聴いていると、そんな当たり前なことを再認識させられる。


しかも、かなりの名曲ぞろい。大名盤だということは間違いなし。
少なくとも、私が今年買ったCDでは最高の出来。

シングルの「サーカス&恋愛相談」と同様の路線の曲から、
いわゆる正統派のアイドルポップから、思った以上にバラエティに富んでいるけれども
それをベルハーが歌うことによって、完全に、唯一無二のベルハーの世界になってしまうところがベルハーの凄さ。

サーカス&恋愛相談」や「ダーリン」、「Pleasure~秘密の言葉」に見られるオリジナリティは凄い。
こんな曲、詞、聴いたことが無い。
「みつめられても あげられるものはない」とか すごい、と思う。

でも曲がいいとかいうレベルではなくて、その歌詞、声、音が一体となって、
そこに展開される世界があまりにも独創的ですばらしい。

特に、「ライスとチューニング」の、みずほちゃんのラップには腰が砕けた。
ラップっていうか、そのへんの15、6の女の子がただ早口でボソボソしゃべってるだけ、
と言ったほうが正しいのではないかというしろものなんだけど

私は、確か高校卒業した頃だったか、初めてルー・リードのアルバムを聴いて("New York" だった)、
これが歌なの? しゃべってるだけじゃないの? でもかっこいい、
と思ったときのことを思い出した。

ラップというものに挑戦するアイドルは多いけれど
ミョーにちゃんとやってて、逆につまんない、というものが殆ど。

それを、このように、ラップという方法をほぼ無視しているというか、
はなっからやる気なし、というところがあまりにもパンクというか、
コペルニクス的転回と言おうか、素晴らしいとしかいいようがない。



でもたぶん。。 世間では理解されないだろうなぁ、と思う。残念ながら。
先日、かなり音楽には詳しくて、結構私と趣味も合って、
アイドルにも理解のある友人に聴かせてみたけれど、
なんだか困った顔をしてた。。


とにかく、

この世には結構魔物が跋扈している、ということ。
その認識があるかないかで、世の中は全く別物に見えてくるはず。


ところで、
季刊 TRASH-UP!! というとんでもないアンダーグラウンドな雑誌のvol.15が、
ベルハー表紙でアイドル特集を組んでいるのだけれど、
私の知らないアイドルが死ぬほど出てきてびびった。

どうやら日本のアイドル業界は、かなり地下化・オルタナ化が進んでおり、
それはもう私の想像をはるかに凌ぐくらい、すごいことになっているようなんだけど
それについてふれてしまうときりがないので、またの機会に。







New York

New York

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sire / London/Rhino
  • 発売日: 1994/11/24
  • メディア: CD



鏡花短篇集 (岩波文庫)

鏡花短篇集 (岩波文庫)

  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1987/09/16
  • メディア: 文庫



BedHead

BedHead

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2013/08/10
  • メディア: CD



季刊 TRASH-UP!! vol.15

季刊 TRASH-UP!! vol.15

  • 作者: (書籍)
  • 出版社/メーカー: 株式会社トラッシュアップ
  • 発売日: 2013/05/19
  • メディア: 雑誌



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