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本日のお題:国際的競争力って?(2) [ひとり妄想対話篇]

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- (おんな編集者A)さて先生、先日の続きですが、
ところで、日本文化が海外で急速に受け入れられるようになったのは、90年代後半以降のことだったと記憶していますが、その背景には、やはりインターネットの普及により、日本の情報が世界中で手に入るようになった、というのがあるのだろうと思います。
でもその一方で、日本国内はといえば、世界各国の情報が手に入るようになったにもかかわらず、そんな流れとは逆に、日本のサブカルチャーが、あまり海外の文化を手本にしなくなり、独自の文化を形成していったような気がするんですけど、考えてみればこれは不思議じゃありませんか。

- (先生B)うん、例えば、80年代の日本においては、今とは比べ物にならないくらい、入ってくる海外の情報なんて少なかったね。 
そして、今思えば恥ずかしい限りだが、ファッションから音楽から何から、MADE IN JAPAN よりも、欧米製品、つまり「舶来」モノの方が無条件にえらいというか、憧れの対象みたいなものだったね。

- それが90年代に入って、変化した原因は、何だとお考えですか。

- いちばん大きな変化は、円高が進んで、誰でも気軽に海外にいけるようになったことだろう。これは大きいよ。 これによって、日本人は海外旅行というものを気軽に楽しむようになって、海外は遠いところでもなければ憧れるようなところでもなくなったし、「舶来」であることが別に有難くなくなってしまった。
例えば、80年代の日本にとっては、ロンドンとかパリ、ニューヨークっていうのは或る意味絶対的な存在だったんだよ。 けれども、実際行ってみたら、別にオシャレな人ばっかりってわけでもないし、売ってる服だって東京と大して変わらないし、、ということもわかっちゃった、ということなのかもしれない。

- 距離が近づくことによって、現実を見てしまって、「憧れ」が憧れでなくなってしまったというような。。

- そうだね。 90年代半ば以降は、それまでの欧米の絶対化とか、憧れとか、特に若い世代を中心に、欧米コンプレックスみたいなものが、急速に薄らいでいった時代だったように思うね。
それにつれて、サブカルチャーが日本独自の進化を辿るようになって、それとほぼ時を同じくするように、日本文化は世界的に認知されるようになった。 これは偶然ではないだろう。 
多分、海外に行く日本人が増えたのと、海外から日本に来る観光客が増えたのが同時進行していたんじゃないかなあ。そして、特に欧米にとっては遠くてよくわからない国だった日本がわりと身近になって、それと同時に海外に日本という国のことがより多く紹介されていったんじゃないかな。

- 私は好きではないんですが、いわゆる "COOL JAPAN" ということばがありますね。
それは言うまでもなく、外国人から見た、日本が生んだかっこいいものなんですけれど、その大半は、"kawaii" ものでしょう?
これもまた、国際的な競争力なんてものを意識しながら作られたものとは思えないものばかりですよね。

- そうだね。 要するに、科学技術に基づいて、客観的に「良い」もの、或いは単純に便利なものを作ったところで、必ずしも売れないわけだ。
人間は、そこに何らかの付加価値が、或いは記号性といってもいいかな、そういったものがないと、生活必需品でもない限り、買わないよ。
昔の話で言えば、レーザーディスクというものがあったね。 あれは今考えれば、DVDみたいなものだったし、VHSビデオよりも優れていたはずなのに、売れなかったね。これはなぜなんだ、ということを掘り下げることは、なかなか意味があることなんじゃないか。

- 例えば、最近の例で言うと、3Dテレビなんてものがありますが、これも、技術的にはすごいことだし、新しいけれども、果たして売れるかどうかといったら、私は疑問なんですけど。

- それは何故だろうね?

- うーん、そうですね、技術的にはすごいかもしれないけど、別に3Dじゃなくてもね、って思うので。。

- そうだね。そういうことなんだよ。 電気自動車が売れないのも似たようなことかな。 いいとは思うけれど、別に欲しくはない、っていう。 
これは要するに、文化が形成されていない、ということでもあるね。その意味ではiPodなんかとぜんぜん違う。 まあ、この比較は適切じゃないかもしれないけれど。
あと、まあ、こう言っては身も蓋もないけれども、結局、経済や社会に関することというのは、化学や物理の実験ではないのだから、こうすればこうなる、という規則性はないんだから、競争力をつけて、グローバル経済で勝つには、こうすればいい、という法則もないんじゃないか。
こうすれば成功する、みたいな本が後を絶たないのも、結局その本に書いてある通りにやっても、だれも成功しないからだろう?
ロラン・バルトがこう言ってるね。


いわゆる人文諸科学の脆さは、おそらくつぎの点に起因するのであろう。すなわち、それらは、予測しえないものの科学であり(「経済学」につきまとう幻滅と分類上の困難さは、ここから生じる)-このことが、ただちに科学の観念を変えてしまう、ということ。

(ロラン・バルト 『文学の記号学』)



- とはいっても、現実問題、うちなんて、安い中国製品におされて、最近売り上げが落ちちゃって、たいへんなんだよ、という、いわゆるものづくり系の会社も、もちろん多いと思いますが。

- 海外の競争相手を意識するようなこと、必要以上に競争意識を持つよりもまず、まずはひとりひとりが、自分の好きなこと、自分にできることをとことんやってみることに、私はむしろ可能性を感じるね。業種問わず。
そうすれば、結果は自ずとついてくるんじゃないか? なんて、極めて無責任な言い方だが、と同時に、極めて楽観的に、私は考えているんだがね。

- Eternal Optimism、ですね。

- そうさ。 とにかく日本人はバブル崩壊以降、いつでも悲観的すぎで、マジメすぎる。 もう21世紀も10年過ぎたんだから、そろそろ日本人のメンタリティというのも、変わってほしいものだねえ。
とにかく競争、競争、っていってばかりいても、なんだか世の中軋みが生じてくるというのかな、居心地が悪くなるよね。

- そうですね。もっと楽にいきたいですよね。忌野清志郎が、競争してばかりいる人たちを皮肉ってる曲がありましたね。

- うん、彼は本当に素晴らしい。20年以上も前に、原発反対の歌を歌っていたり、彼は預言者だったんじゃないか、なんて思うこともあるよ。
それに、彼は誰とも競争なんかしてなかったよ。 ただ、自分が好きな音楽をやって、自分が正しいと思うことをを言って、気に入らないやつに噛み付いていったんだ。 本当にピュアな、素晴らしい人だった、と思う。
でもそれが要するに、ロックンロールってことだと思うけどね。

- そうですね、タイマーズとか、RCの「COVERS」なんて特に、今の日本でもっとも聴かれるべき音楽じゃないかと思いますよ。

- 本当だね。 まあ、話を戻すと、ある程度の競争は大事さ。 競争がなければ、進歩もないし、消費者に対するサービスの低下も招く、これは事実だ。
でもね、競争、競争とばかり言っているのは、粋じゃないねえ。 典型的な、あくせく働く日本人の悪いイメージそのものじゃないか。
いい加減に、そろそろそんな時代は終わるんじゃないか、という気もするんだ。 というより、終わらせなければいけない、というかな。 競争でもない、かといって競争がないのでもない、別の観点とか考え方、生き方が必要だと思うんだ。 今こそ新しい時代の幕開けだよ、きっと。
最後に、倉林靖氏の言葉を引用しておこう。これはもう10年以上前に出された本からで、まあ、ちょっと理想論的ではあるけれど、まさに、震災後の今、読まれるべき言葉じゃないかな。


われわれの現代社会はこれまで競争原理の上に立つ資本主義の原則に則って進んできたが、このことが社会を大変住みにくくし、また経済全体からもある程度以上の発展可能性を奪うことが明らかになってきている。それに代わって築かれるべき観念は「共生する社会」という概念でなければならない。人間一人一人の価値を大事にし、生命を慈しみ、お互いの個性を尊重しあう社会である。

(倉林靖 「解説-未来に占めるべき岡本太郎の位置」、岡本敏子 『芸術は爆発だ!岡本太郎痛快語録』)








モードの体系―その言語表現による記号学的分析

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