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悪魔主義少女 [イメージ・象徴]

Valdes_inictuoculi.jpg




最近、スペインに少し興味があって、特にセビリアあたりに、妙に惹かれている。

そんな中、
1月頃に澁澤龍彦の『ドラコニア綺譚集』を購入し、しばらくほったらかしにしていたのを、
先日なにげなく手にとってみたら、「スペインの絵画について」というエッセーがあり、
そこで、ムリリョをはじめとする、セビリア派の画家が取り上げられていて、驚いた。

これも、またしても、先日の記事に書いたシンクロニシティということになる。

以前に読んだのを引っ張り出してきて読んだというのなら、
たとえ意識せずにその本を手にとったとしても、その記憶が脳に残っていたのだろう、
と解釈できるけれど、これは完全に初読の本で、
どんな内容なのかは知らなかったので、シンクロニシティとしか言いようが無い。

確かに澁澤は、ヨーロッパを何度か回った結果、スペインが特に気に入ったようで、
その中でもアンダルシア地方が彼にはとてもしっくりくる、というようなことを
何かのエッセーで書いていたけれど、

まあそれはおいといて、
私はスペイン絵画には疎く、スペインの画家で思いつくのと言えば、ダリ、ベラスケス、グレコ、くらいで、(グレコはギリシャ人だけど)
スペインに行ったこともない。
でも、いつかプラド美術館には行ってみたい、とは前から思っていた。
ボッシュの「快楽の園」があるからだけど。

このエッセーで取り上げられていたムリリョはかろうじて知っていたけれども
バルデス・レアルについては、初めて知った。

澁澤によれば、セビリアにラ・カリダード施療院という修道院+病院のような施設があって、
そこにムリリョとバルデス・レアルの素晴らしい作品があり、
その中でも澁澤はバルデス・レアルを目当てに、ここを訪れたのだという。

そのバルデスの作品が、冒頭の絵画と、以下の絵画。


user_50_finis_gloriae_mundi_leal.jpg


確かに素晴らしい。
ちょっとハッとするくらい、私好みの絵。
要するに、戦慄が走りまくりってこと。

ただ、上の作品は(「この世の栄光の終わり」)、凄いとは思うけれど、ちょっと私にはグロテスクかも。。
(死体が腐敗していく3段階が描かれている)


これをバルデスに依頼したのは、ミゲル・デ・マニャーラという貴族で
ドン・ファンのモデルという伝説のある人物というので、多少は名が知れているらしい。

彼は若いころに放蕩三昧で過ごしながら、ある出来事をきっかけに改心、
その生涯の後半に、その全財産をなげうって、
セビリアにラ・カリダード施療院を建立、そしてその内部を、
ムリリョとバルデスによって装飾せしめたのだとか。

では、そんな聖人のような人が、どうしてこんなヤバい絵を描かせたのか、
非常に興味深いところなんだけど、長くなるので『ドラコニア綺譚集』を参照。

まあ、彼のおかげで、こんなにとんでもない素晴らしい作品が残されているわけだから
彼には感謝しなくては。

尚、マニャーラとラ・カリダード施療院については、こちらに詳しい。

http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/36918/1/BungakuKenkyukaKiyo3_56_Toyoda.pdf


ところで、彼の肖像画が、ムリリョによってもバルデスによっても描かれているらしく
ヨーク市立美術館にあるバルデス・レアールのそれは、私にはさっぱりおもしろくない、
と澁澤は言っているけれど、その作品はこちら。


DonMiguelManara_1679.jpg


確かに、澁澤の言うとおり、さっぱり面白くない。
ていうか、やっつけでしょ、これ。。
もしこれで本人にちゃんと似てるんだとしたら、あまりにもふつーのおじさんだし、
よくまあドン・フアンのモデルなんて言われたものだなと思ってしまう。


また、同じバルデス作品のこちらも、マニャーラの肖像といわれているらしい。

donmigueldemaaraleyendok.jpg


ただ、この絵に描かれている大人と子供のどちらがマニャーラなのかは、私は知らない。

しかし、
この絵で私が度肝を抜かれたのは、この左側に描かれている子供。

というのも、これって、完全に、諸星大二郎が描きそうな。。

donmigueldemaaraleyendok_01.jpg

ていうか、ここだけ見たら、諸星大二郎の作品といわれても、私は全く疑わないと思う。
300年の時を超え、しかもスペインと日本という遠くはなれた2つの土地で、
同じような絵を描く人がいる、というのが、私には非常に興味深く思われてならない。



さてそのエッセーの最後で、澁澤は、以下のように述べている。

名著『ドン・ジュアンとドン・ジュアニスム』を書いたグレゴリオ・マラニョンによると、ムリリョの描いた一枚には、「魅惑的な少女のような顔つき」をしたマニャーラが眺められるというが、これは残念ながら私は見ていない。どこの美術館にあるのかも分からない。機会があったらぜひ見てみたいものだと思っている。少女のような顔をした悪魔主義者なんて、聞くだに心をそそられるではないか。


少女のような顔をした悪魔主義者。
このイメージが、ガツンときた。

でも、オーメンのダミアンなんて、まさにそんな感じでは。
まあ、実際には悪魔主義というより、悪魔そのものなんだけど。

あとは、『魔太郎がくる!』の切人とか。。


悪魔主義少女


誰かそんなタイトルで、漫画でもかいて欲しい。

なんかトーキングヘッズ叢書あたりが組んだ特集のタイトルみたいな。


ところで、この澁澤ですら見たことも無ければどこにあるのかもわからないという、マニャーラの肖像。
現代は澁澤の生きていた時代とは違い、ネットでなんでも検索できる時代。

マニャーラ、ムリリョ、肖像、

で検索したけれど、それらしきものがさっぱり出てこない。

澁澤が知らないものは、Googleでも出てこないのか、
と考えたら、なんだか、恐ろしくなった。






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In ictu oculi (El triunfo de la muerte o En un abrir y cerrar de ojos). 1672.
Óleo sobre lienzo. 220 x 216 cm.
Hospital de la Caridad de Sevilla

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