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BiSのリアリティ。 [ROCK'N'ROLL]

BiS_DIE_2.jpg






先日も記事に書いた、あまりにもDESTROYで最高なオルタナアイドル、
BiSだけれど、

存在としては凄いと思ったものの、
音楽的には、どちらかといえば私の苦手なジャンルだったので、ちょっと、、
という状態だった。

それが、"Primal" という曲のPVを見て、彼女たちのイメージが一変。


これは、曲はすごくいいのだけれど、そのPVが世間的にかなり評判が悪いようで、
確かに、かなりグロい。
正直、グロいものが苦手な私には、正視に耐えない、というレベルのもので、
あまりにも悪趣味だと思った。

でも、結構曲がいいので、我慢してみていた。
そうしたら、そのうちに、なぜか、なんだかわけのわからない感動をおぼえてしまった。
それ以来、完全にBiSにはまってしまった。

これは、映像がいいから曲がよく聴こえるのでもなければ、その逆でもなくて、
完全にシンクロしている。或いは、相乗効果。
まさに、「死刑台のエレベーター」とマイルス、「デッドマン」とニール・ヤングのようなものである。

気がつけば、CDも買って、毎日聴きまくってるという状態。。

冷静になって考えてみれば、
これはたしかにいい曲で、また、それ以外の曲も名曲ばかりなんだけれど、
音楽的にもやはり私の好きなタイプのものではないし、
それほど優れているとも思えない。
でもそれを聴いて感動するのは、やはり、音楽性とか曲のクオリティうんぬんではなくて、
もっと違った何かがあるからだろうと。

この曲の凄さ、このPVの凄さ、
さらにはBiSの凄さってなんなんだろう、と考えてみた。


そもそも、
なぜこの映像を見てグロいと感じるのか。
なぜこんなグロいものを見て感動するのか。


グロいとはいうけれど、別にスプラッター的なものではないし
例えば、一部のゴス系・オルタナ系のPVのように、
あえて不快でグロいものを作り出して見せているのでもない。

そこに映し出されるのは、一見内臓の手術映像か何かにみえてしまう、
傷口だとか、口の中のドアップだったりといったものが多い。
さらに、あからさまに彼女たちを誹謗中傷しているネット上の書き込み、
排泄、性交、、
要するに、人間の汚い部分、卑しい部分ばかり。

つまりそれらは、ただ、人間のむき出しな姿を映しただけなのだ。
これに気づいたとき、驚いた。

我々はふだん、現実がグロいだなんて、考えてもいないと思うんだけれど、
それが、むき出しな、あまりにも生な状態でそれを映像で見せつけられると
人間は、ものすごい生理的な不快感を感じるものなんだ、ということに気づいたというか。


例えば、交通事故現場のニュース映像。
警察の鑑識が現場作業をしている映像の中で、なぜか必ず、事故で怪我をした人のものと思われる
血痕が映し出される。
私にはこれが、ヘタなスプラッター映画よりも、生理的な不快感を感じずにいられない。
なんでこんな不快なだけの映像を、テレビで流さなければならないのか、私には全くわからない。

或いは、まあこれは極端な例だけれども、
谷崎の「少将滋幹の母」には、女性への執着を断ち切るため、
人が死んで腐っていくところをひたすら凝視するという、不浄観の修業を行う場面がある。
これも、初めて読んだとき、私はただただ不快感を感じただけだった。
今では、理解できるけれども。


しかし、"Primal" のPVにおいては
まず二人の人間が出会い、その愛の結晶として子供が産まれ、
成長し、嫌なことがあったり、うれしいことがあったりしながら、日常を送っていく。

そういった、この世に生を享けた人間であれば誰でもが経験するであろう現実を、
そのまま、映し出して見せただけなのだ。

ただ、通常そこには表立っては語られない部分が多分に含まれているわけで、
或いは、幻想というオブラートに包まれている。
結婚すれば幸せになれるとか、親の子供に対する無償の愛だとか。。

もちろんそれが全て幻想だとは言わないけれど、
DVだとか、子供を殺す親、親を殺す子供だっているし、それが、現実。

そんな辛い現実がそのままそこらじゅうに転がってたらきついし、殺伐としすぎるので、
それらを人前にださないことは、正しいし、幻想だって必要。
かといって、現代日本のように、隠しすぎてしまうのもいかがなものか、
ということなのである。

それをいきなりバーンと目の前に突きつけられると、こんなにも衝撃的であるということ、
また、そのときにそこから目をそらさず、じっくりと見てみたら、胸をうたれずにはいられないこと、
それはつまり、人間の本質にかかわることなんだ、ということに、
私は初めて気づかされ、そしてその方がむしろ衝撃だった。

この映像を作った人は、すごいと思う。
映画をとったら、凄いものができるんじゃなかろーか。(もう撮ってる?)


少し前に、芸人・鉄拳の画いた、人間の一生を画いたパラパラマンガみたいなものが
すごく感動的、と評判になったことがあった。
やってることはあれと同じだと思う。

つまり、なにも特別な、感動的なことでもなんでもなくて、ドラマティックなものでもない。
人間である以上逃れられない、宿命みたいなものがそこに凝縮されていることが、
なぜだかわからないけれど、胸をうつんだと思う。

例えば、たいていの映画やドラマ、文学などにおいて、人間の死というのは、
荘厳であり、ドラマティックであり、とてつもなく悲しいものとして描かれる。
それは明らかに、それを見ている人の涙を誘うことを意識して作られている。
そのあざとさが、私をしらけさせる。

しかし、人間の死を、子供がアリでも踏み潰すように、
或いは犬猫の死のように描いて、そこに凄みを感じさせる作家もいる。

それは例えば、深沢七郎、石川淳、楳図かずおであり、そういったものこそ、ホンモノ。

映画で言えば、なんだろう。あまり思いつかない。
なにかベトナム戦争もので、そういうのを見た覚えがある。


BiSに話を戻すと、
彼女たちの歌は、歌っているというよりは、泣き叫んでいるようにしか聴こえない。
それは、まるで、彼女たちの心や体に刻まれた傷を、血の滲んでいるその傷を
見せ付けられているような感覚。

ふつうの人間は、そんなものは見せない。
むしろ、どんなに痛くても、つらくても、それを隠して笑っていることが良しとされ、
オトナとされるのがこの日本社会。

しかし、彼女たちは、そんなことは一切お構いなしに、生の現実を見せ付けている。
しかも、某アイドルのように、わかりやすいことばで直接それを吐露したりはしない。
ことば以外の表現手段で、そういった生々しい現実を表現し、たたきつけている。
そこが、BiSのアーティストとしての凄さなのではなかろーか。

全裸・坊主頭・血の滲む手足。。
彼女たちのPVに映し出されるそれら全ては、一切の虚飾を剥ぎ取った、
生々しい現実の象徴であるわけで、
だから、たいていの人間は、彼女たちのPVや、その奇行にたいし、
生理的な不快感や嫌悪感を感じるのではないか。。


或いは、ベクトルが逆に向かったゴスの、究極の形なのかもしれない。

健康的で幸福に満ちているかのような現実社会に欺瞞を感じ、
そこに背を向けて自らの美意識の世界に沈殿し、暗黒の中に身を投じて
社会と一切コミットしないのが通常のゴスなのだけれど
途中までは同じだったのが、自らの世界に閉じこもらず、むしろ
それらの嘘っぱちを暴く方向で、自爆覚悟で社会にまともにぶつかって行ってしまった
それがBiS、そんな気がする。


もういい加減に、アイドルという商品を使ってどれだけ世間をだまして、儲けるか、
ということばかり考えている人たちに、いいようにやられてる場合じゃないでしょう。

それよりも、アイドルというフォーマットでどれだけ面白いことができるか、
ということを考えている人たちが支持されるべきだし、
その意味では、BiSやBABYMETAL、Tomato n'Pine(既に解散)などを手がけている人たちが、
いままさに、そういう人たちで、例えばこれとか見てると、
このへんにかかわってる人たちがすごくそれを楽しんでるな、って思う。

http://natalie.mu/music/pp/bis

http://natalie.mu/music/pp/babymetal02

こういうノリっていうのは、アイドルを商品としてしか見てない人たちとは
根本から違うし、要するに、クリエイターということでしょう。
この人たちは、いまたぶん日本で一番才能があるクリエイターたちで、
日本のサブカルチャーを担ってる人たちだと思って間違いないでしょ。


話は逸れたけれど、これだけアイドル全盛と言われながらも、そのアイドル幻想というものが
綻びを見せつつある現代において、
それを思いっきりブチ壊そうとして登場した彼女たちが、その手段として
あまりにも生々しい、リアリティのあるものを世に問い続けるのは、
必然だと思うし

アイドル幻想だけではなく、2011年の震災以降、
世の中のあらゆる欺瞞・ウソ・不正などの、社会のダークサイドが暴露され、
なにもかもが壊れつつある現代において、
これほどまでにDESTROYなBiS、或いはプー・ルイは、時代の申し子であると思うし、
そこには痛快さすら覚えるし、これはある意味革命なんじゃなかろーか。

私は彼女たちを、絶対に支持したい。




。。なーんてアツいことを、例えば仮にプー・ルイに言ったとしても、

ははは、と軽く笑われて終わり、なのである。

たぶん。




ちなみに、この無気味なジャケは、「福笑い」なんだとか。。

福笑いをリアルな人間の顔写真でやると、こんなにも無気味なのか、
とびっくりした。








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