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ヴラド・ツェペシュ+驚異の部屋 [奇想・妄想]

Vlad.jpg



最近ドイツとかスイスの中世キリスト教美術がとても気になって、
美術館などをいろいろ調べているうちに、
偶然、ウィーンはインスブルックのアンブラス城 Schloss Ambrasを知った。

そのサイトに異様なインパクト顔を見つけて、
なんかこの顔、見覚えがある。。 と思ったら

http://www.schlossambras-innsbruck.at/en/visit/collections/


思い出した。
ドラキュラのモデルとして知られるワラキア公、
ヴラド・ツェペシュだった。


うーん 実に、コクのある顔。
イイ顔すぎる。

改めて彼について調べてみた。

「ツェペシュ」は姓ではなく、ルーマニア語で「串刺しにする者」の意味で、
ドラキュラとは、竜の息子を意味するものらしい。
父親ヴラド2世がドラクル(竜公)と呼ばれたので、ドラクルの息子、
つまりドラキュラ、ということだとか。

串刺しという処刑方法は、今日ではありえない残酷さだけれども
この時代においては(15世紀)、キリスト教国でもイスラム教国でも、
さして珍しくはなかったというのだから驚く。

ちなみにドラキュラ城といわれ、観光名所になっているブラン城は、
彼の居城ではなく、実際には、彼のおじいさんが住んでいたらしい。

なんだかいい加減な話。

でも、その城の写真を見るとほんとに美しくて、しかもゴスな雰囲気に満ちており、
機会があればいってみたい。

http://www.bran-castle.com/


ただ、彼の肖像画、なぜオーストリアのインスブルックにあるのかがわからない。
おそらくはルーマニア史上、最も世界的に有名なルーマニア人の肖像画なんだから、
ルーマニアに返してあげればいいのに、、とは思うけど。

私はドラキュラ映画はいくつも見たけれど、
少なくとも、そこに登場するドラキュラ伯爵は、彼の肖像画をモデルにしたとは到底思えないくらい
全く別系統のキャラだけど。

だから逆に、例えばベラ・ルゴシとか、映画のドラキュラがいったい何をモデルにしてるのか、
の方が謎。知りたい。



ところで私は、ヴラド・ツェペシュのことを、小学生の頃から知っていた。
なぜかといえば、藤子不二雄の「T・Pぼん」で、
彼についてのエピソードを読んだことがあったから。

今はどうか知らないけれど、私が小学生の頃は、
男女問わず、みんな藤子不二雄を読んでた。

でもそれは、ドラえもんだったり、パーマン、オバQ、忍者ハットリくん、
だったりしたような気がするけれど
私はそれらにはまることはなく、「魔太郎がくる」とか「ブラック商会変奇郎」、
「黒ベエ」、「夢魔子」などばかり読んでいた。
なにやら暗くて怪しい、私の知らない世界がそこに広がっているかんじが好きだった。
(驚いたことに、ぴったり2年前に、私はこんな記事を書いていた)

そして図書館に行っては、乱歩の少年探偵団ものばっかり読んでたりして
いわゆる課題図書的な本にはぜんぜん興味を示さない、
いま思えば、ずいぶんとかわいくない小学生だった。
(逆に、子供の頃は本といえば課題図書ばっかり読んでいた、という人がいるとしたら、
どんなオトナになっているのだろう?誰かに追跡調査してほしい)

その後、中学生になったら、宮崎駿とか、大友克洋なんかにもはまったんだけど、
大学に入ったころから、急速に興味を失ってしまった。

でも、上に挙げた、小学生の時好きだったものは、今でも大好き。


T・Pぼんのことは強烈に覚えているのに、家にないということは
たぶん誰かに借りて読んだのだろうけど
ヴラド・ツェペシュが吸血鬼ドラキュラのモデルとなった人で、
たくさんの人を串刺しにしてコロス、というそのエピソードは強烈に印象に残っていて、
借りて読んだだけで、それから数十年が経過した今でも覚えているのだから
やっぱり藤子不二雄はすごい。
いや、たぶんヴラド・ツェペシュがすごいんだろうけど。


Vlad_02.jpg


たしか昨年だったか、AmazonでT・Pぼんを発見して、懐かしさから
全巻大人買いした(といっても文庫版で全3冊)。

これはめっちゃ面白い。
これをわくわくしながら読んだ、当時の気持ちがよみがえった。
私が歴史好きなのも、これを読んだからかもしれない。


などと考えてみると、私の好みとか、美意識の基礎的な部分は、
小学生の時点で確立されていたわけで
そう考えると小学生の時点で読むものというのはとても大事で、
一生を左右するものなんだなぁ、と思う。



ところで、
ルーマニアでは、いわゆるウィッチクラフト(魔女文化)が数世紀の歴史を持っていて、
現代においてもなお、魔女とか占い師として生計を立てる人々がたくさんいる、
というのだからびっくりする。

占い師ならまだしも、魔女というのは驚くけれども、まあ、
日本でいうとイタコとか、沖縄のユタみたいなものか、と思うけれど
2011年に労働法が改正され、なんと「魔女」が正式に「職業」として認められた、
というのだから、なかなか面白い国だと思う。
ルーマニアのことは、殆ど何も知らないけれど。


しかし、本当はドラキュラ云々はどうでもよくて、私が驚いたのは、
アンブラス城というのは、澁澤の言う、ハプスブルク家の「妖異博物館」のひとつだったということ。
これを知った途端、俄然アンブラス城に興味がわいたのである。

アンブラス城は神聖ローマ皇帝の中でも最も偏奇な収集狂、ルドルフ2世に多大な影響を与えた叔父、フェルディナンド2世(大公)の居城であり、そこには
その膨大なコレクションを収めた驚異の部屋ヴンダーカンマー Wunderkammer)と呼ばれる展示室兼収蔵庫がある。

確かに、当時のヨーロッパの上流階級において流行した「驚異の部屋」については、
澁澤の著作で何度か目にした覚えがあって
(『夢の宇宙誌』所収の「玩具について」にくわしい)
とても興味を惹かれたけれど、
まさか現代にまで、それが博物館として引き継がれているとは思わなかった。

ちなみに、Wikiにまで「驚異の部屋」についての記事があったのには驚いた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A9%9A%E7%95%B0%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B


アンブラス城にいったいどんな「驚異」があるのか、とても興味深いし
博物館の成立史においても非常に重要な位置をしめるものなので、
近いうちに、見ておきたい。

とは思うけれど、いつになることやら。






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