西條八十 [文学・思想]
-絶頂に到らば市府の灯は蕃紅花の如く
-絶頂に到らば市府の雨は真珠の如く
-絶頂に到らば市府の空は血の如きを見む
軽雲は
燐光の如く
海上を駛(はし)り、
一の寡婦は微笑み
二の寡婦は掌を合せ
三の寡婦は黄金の洋燈を擡ぐ、
彼等ひとしく静かに歩む
彼等ひとしく石階を急ぐ。
(「石階」)
暗い、暗いと云いながら
誰か窓下を通る。
室内には瓦斯が灯り
戸外はまだ明るい筈だのに
暗い、暗いと云いながら
誰か窓下を通る。
(「誰か」)
西條八十の詩を初めて読んだのは、ちょうど2年前の今頃で
その後、詩集を購入してほったらかしになっていたのを、
最近読んでみたのだけれども
特に、詩集「砂金」に見られる、その言語世界に満ちる戦慄、
冷え冷えとして硬質なイメージ、
一歩間違えば、狂気に陥りそうな不安、
日常と深淵とが隣り合わせになっているようなギリギリ感、
異次元空間性、、
結構な衝撃を受けた。
そこに広がる世界は、たとえばモローのような、薄明のなかに沈む
宝石や鉱石と、死のイメージに満ちた、
19世紀の象徴主義の世界、
あるいはムンクの描く狂気と不安、
そういったものを感じさせるけれども
私がまず思いついたのは、ベックリンだった。(冒頭の画像)
いずれにしても、絵画的なのである。
そこにえもいわれぬ不気味さと凄み、そしてあまりにも強烈な
イメージ喚起力が感じられ
それが、あまりにも、グッとくる。
素晴らしい。
2014-05-29 15:56
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